……そうか。

綺鳴の言葉で思い出した。

何かの本で読んだことがある。

恋はするものではなく、落ちるものと。

元々落ちてしまう運命だったんだ。

それを無理やり元の高い場所に戻すのは難しい。

どうせなら、とことん落ちてしまおう。

彼―――弥彦と一緒に、深く深くまで。

「燕、弥彦くんって、そないにかっこ悪い男か?」

「ち、違う!!弥彦くんは、強くて、かっこよくて、優しくて……僕に無いものを全部持ってる、大切な人だよ!!」

「せやろな。燕が好きになった人やもん」

綺鳴は燕の頭を撫でつつ、強い口調で喝を入れた。

「本気で好きなら、死ぬ気で添い遂げな。周りの目を理由に別れたら、絶対後悔するえ!」

「うん……ありがとう」

「姉様は、ずっと燕の味方や。応援しとるえ。明日、弥彦くんとよう話し合っとき」

「うん……うん」

やっと、全てから解放された。

全身に巻きついてた鎖が解けたように、身体が軽い。

良いんだ、大丈夫なんだ。

この恋は決して間違ってはいない。

嬉しさでぽろぽろと涙が零れる。