私も、自分が受け持った相談を聞くため、ノートとシャーペンをスタンバイさせる。

これが、私達の一日の始まりであり、日常の1ピースでもある。




「で、雛子(ひなこ)んちのモカちゃんは見つかったんだけど……」

言いづらそうに、美色が制服のポケットから一枚の写真を取り出した。

モカという名前がピッタリな、コーヒー色の毛のトイプードルが写ってる。

耳元に付けたピンクのリボンが可愛らしい。

でも、モカちゃんは全体的に少し薄汚れていて、飼い犬には見えにくい。

「マジで?!良かったー!!」

雛子が高い位置に結ばれたポニーテールを揺らした。



私と美色が今相手をしてる依頼者は、クラスメイトの関町 雛子(せきまち ひなこ)。

依頼内容は、一ヶ月前に行方不明になった飼い犬探しだった。

雛子は両親が共働きで、雛子自身も現在所属してる女子ソフトボール部が試合前で忙しいため、代わりに私達に探して欲しいとの依頼だった。

その日からの放課後は私も一緒に目撃情報を聞いたり、迷い犬の張り紙を出したり、野良犬がよく集まる場所へ行ったりして、本当に大変だった。

日が傾く頃には、やんちゃな小学生みたいに泥だらけになってたな。

結局、雛子の家から少し離れた一人暮らしの男子大学生の家で保護されてたんだけど。