「『姫宮 燕(ひめみや つばめ)くん。
姫宮 綺鳴(ひめみや きなり)の弟で、姫宮グループの跡取り予定。
園芸部所属。
バスケ部の畠山 弥彦(はたけやま やひこ)くんとは昔からの仲良し。
中性的な美人で、優しくて純粋。』……と、こんな感じ?」

「全部おうてるよ。でも、こんだけじゃ……」




『―――もしもし』




燕くんの声が壁越しに聞こえてきた。

私達三人は、ビタっと壁に張り付き、耳をすます。

盗み聞きなんて悪趣味だけど、これも仕事の内、綺鳴と燕くんの為だ。

『うん、うん……ごめんね、やっぱり……無理かも。いや、無理だ』

途切れ途切れに微かに声が聞こえてくる。

電話中みたい。

『やっぱり、皆僕に期待してるから、台無しにするわけには行かないし……だから……』

相手は誰だろ……

気になる。

期待?台無し?どういう事?

『ごめん、ごめんね……本当に……いや、だ、だって!……僕だって、こんな風になるつもりじゃなかったし……』

あれ、燕くん……泣いてる?

声がちょっと震えてる。