先生は一ミリも悪いと思ってなさそうなムカつく顔で耳を掻いてるけど、もうこの際放置しておこう。

あたしはウエストポーチから空港の地図を取り出して広げてみる。

もう広過ぎて訳分かんなくなりそう。

「さっさとキナリんやスズくん達と合流しないと……えっと、こっちがチェックインカウンターだから……」

「おい国吉、ちょっと遠回りしてこーぜ」

「はぁ?!何でですか、ただでさえ迷子になりそうなのに……あれ?」

石内先生が顎で示す方を見ると、空港の中で一箇所明らかに普通じゃない空気を醸し出してる場所があった。

周りの人達も、なんだなんだと二度見したり振り返ったりテレビの撮影かと思ってるのかカメラを探したりしてる。

赤いカーペットが敷かれて、ベンチの上にふかふかしてそうなクッションが置かれて、使用人らしき人達がズラリと並んでて……

ものすごくキラキラした、セレブというかゴージャスというか、とにかく豪華な空間。

その中から、燕尾服を着た見覚えのある男性が早歩きでこっちに来て、恭しく頭を下げた。

あれ、この人確か……

「国吉 美色様、石内 寛治(いしうち かんじ)様でございますね。お待ちしておりました。お荷物はこちらでお預かりいたします」

思い出す前にメイド服の人や執事服の人がザッと一列に並び、あたし達のキャリーバッグとボストンバッグを持ってどこかへ行ってしまった。