「なんでオレなんだよー……」

ぶつくさ言いながらあくびをこぼしたのは、あたしが昨日電話で呼んだ人。

文句を言いつつ来るあたり、教師なだけあって根は真面目だ。

「しかも電車かと思ったら飛行機……空港まで来るの超めんどかったんだけど。混んでて人多いし」

「石内(いしうち)先生、しっかりしてよ!タイムが危ないかもしれないんですよ??」

「だーからなんでオレなんだよ……もっと探せば適役はいるだろ」

ガシガシとかく頭は、いつものボサボサヘアじゃなく、比較的整えられてる。

けどネクタイとワイシャツがヨレヨレ。

あたしはそのネクタイを引っ張って眠気覚ましに喧嘩腰で言ってやった。

「自分から部を作れって言ってたのは誰ですかー?!自ら顧問を買って出たのは誰ですかー?!えー?!?」

出番が最初の方しか無くて時々忘れそうになるけど、この人はあたし達の顧問。

部員が全員卒業しちゃった部活があって、石内先生はそこの顧問だったらしい。

けど暇になっちゃって仕事が無いから何か適当に部活作って活動しろと言われて作ったのが、一応『新聞部』の隠れ蓑を纏った『相談部』。

噂が広まっちゃって、生徒の間だけでは堂々と『相談部』って呼ばれちゃってるけど。

「はいはい、全部オレですよー。墓穴掘ったのはオレですよー。分かった分かった、サーセンしたー」