どうやらこの二人の男に捕らわれてしまったらしい。

そして時音にナイフを振りかざした男は、スキンヘッドと筋肉隆々の身体に刺青という海賊のような風貌。

彼の怒りを鎮めつつ時音の処理を教えている細身の詐欺師っぽい男は、少女二人が脱走しないように針を刺すような視線を向けている。

これは、誘拐未遂事件に巻き込まれてしまったという事か。

「側頭葉にある海馬ってやつに強い衝撃を与えると、記憶が吹っ飛ぶんだよ。いっぺん殴って忘れさせちまえば良いだろ」

細身の男が後ろ手に持っていた金属バットをカランと見せびらかした。

「ふん、なるほどな。記憶だけ吹っ飛ばしてそのへん転がしときゃ良いか」

「時音に手を出さないで!」

「うっせえ!!」

細身の男が少女の鳩尾を蹴っ飛ばした。

「グッ」

少女は身体を折るように蹲り、胃液を苦しそうに吐いた。

「奏姉ちゃん!」

隙をついて逃げようとしたが、スキンヘッドの男に髪を強く掴まれた。

「良いか、絶対この事他の奴に言うんじゃねーぞ!言ったらコレがこいつの喉に刺さっかんな!!」

手足と口を猿轡で縛られた少女の白い喉に、細身の男が持った果物ナイフの先がツンツンと当たる。

冗談じゃない。本気みたいだ。