棘や枝が身体に刺さってフラフラになって誰かから逃げる、裸足でパジャマ姿の時音をイメージする。

うん、やっぱりおかしい。

そうなる状況がまず考えにくいよ。

「あの、来栖殿の事をよく知らない小生が言うのも失礼かもしれないのですが……」

おずおずと絢太が挙手した。

「来栖殿が、自らの意思で窓から外へ出た、というのは考えられないでありますか?」

その場にいた全員が目を見開いた。

……は?

時音が?

「ちょっと、どういう事?!飛び降り自殺しようとしたって事!?」

あたしは思わず絢太に詰め寄った。

彼は両手を広げてあたしを抑えるように理由を話す。

「だ、だって!よく見てほしいであります!病院って大体自殺防止のために窓が小さく分割されてるんでありますよね?こんな小さい窓、無理矢理押し込むようにしないと外に出られないであります!もし抵抗したなら、カーテンとかサッシのところ、傷がついたりしてるでありますよ!」

来栖殿の体格や性格を知らないので、小生はなんとも言えませんが、と最後に零したけど、結構納得のいく言い分だ。

身体測定の時に見せてもらった時音の身長は、確か160cm程。女子の平均より若干高い。

体重は見せてくれなかったけど、見た目が細めだから多分軽い方。