【七年前:八月二十一日:K県床鴒島(とこれいとう)】



「姉ちゃ~ん、母さ~ん、ばあちゃ~ん……どこ~?」

緑の浴衣を着た少女が、下駄を鳴らしてトボトボと歩いている。

さっきまで家族と一緒にいたのに、いつの間にかはぐれてしまった。

周りは夏祭りの真っ最中。

カップルや親子、老夫婦がぎゅうぎゅうになりながら屋台を回っていた。

「うー……」

軽やかな笛の音や威勢の良い屋台のおっちゃん達の声は楽しげなのに、一人ぼっちになった自分を嘲笑ってるように聞こえてきて、悲しくなってきた。

数分前に母が射的で当ててくれたぬいぐるみを抱きしめ、少女は下唇を噛んだ。

もう十歳になるのに、こんな所で泣いていてはかっこ悪い。

今はとにかく家族を探さなければ。

(高いところだったら、見つけられるかな……)

懸命に上を向いて辺りを見渡すと、小高い丘の上に真っ赤な鳥居が目に付いた。

神社だ。

神頼みという訳では無いが、神社ならここより安心出来そうだ。

とりあえず、あそこへ行こう。

少女は人混みから逃げるように鳥居へと向かった。