絢太は早く話してくれと強い視線をまっすぐに向けた。




「パン食い競争で餡パン食って、尚且つ熱中症になってテント下の救護班にお世話になったのは、国吉 美色、ただ一人だけだった」




くによし、みいろ。

国吉 美色。







「…………え?」

「ほい、証拠♪」

唖然とする絢太にすかさず綺鳴が写真を差し出した。

騎馬戦のどさくさでブレまくっているが、よく見ると後ろの方にピントが合っていて、問題のキス現場が納められている。

「国吉は普段高い位置で結んでるツインテールだから髪短く見えるけど、下ろしたら結構長いと思うぞ。ツインテールって走る時顔に当たって邪魔そうだし、当時ポニーテールにしてたんじゃね?そんで、熱中症で倒れた時仰向けに寝られないからそれを解いた。で、お前はロングヘアの女だと思い込んだ。まぁ間違っちゃなかったんだけど」

「な、なんで国吉殿が熱中症だと……」

「それも、あの旗本とかいうやつが持ってきた冊子。あれに国吉の名前があったんだよ。症状は熱中症だって事も」

珀成の説明に綺鳴はうんうんと頷く。

「それにお前は知らないだろうが、国吉は化け物レベルの記憶力を持ってるらしい。放送係でテント下にいたはずなのに騎馬戦が崩れたの覚えてないとか、有り得ねえんだよ」