「え、なんで今?!さっきまで大丈夫だったじゃない!?」

「な、なんででしょう……?」

一回意識するとダメなタイプらしい。

玉木くんは赤面したまま、あたしに近寄れなくなってしまった。

「……」

ふと、時間が止まったように動かない綺鳴が目に入った。

「どしたのキナリん?何か分かったの?」

「……いーや、なーんも分からへんわ。ミィちゃん、一旦部室戻らへん?」

明らかに作ったような笑顔で、綺鳴はパタンと冊子を閉じた。

「え、帰っちゃうすか?なにか見つかったんですか?ゆっくりしてって大丈夫っすよ?」

「マナくん、カタツムリと象の歩くスピードが異なるように、写真部と相談部も自分の速度があるのです。お仕事なら尚更」

「けど……片付けも終わってないんだけど!?」

「それは仁衣菜も手伝いますから、早くやってしまいましょう。二人なら秒です。ラブの力は最強です」

「……つまり?」

「せっかくここに来たので、マナくんとイチャつく時間が欲しいです。察して欲しみ」

「ニーナちゃん!!!」

なんだなんだ、帰るって言った途端イチャつき出したぞこのカップル……

完全に自分たちの世界に入った二人をしり目に、あたし達はお礼を言いつつ部室に戻った。

「どうしたの急に?何か分かったの?」

「あ、ミィちゃん。燕が用があるー言うてたで。教室で待っとるって」

あたしの質問を完全スルーして、綺鳴はまた急な事を言い出した。

「え、燕くんが?」

「そ。急ぎらしいから早う行ってあげてくれへん?」

「マジ?前やった弥彦くんの件で何かあったのかな。分かった、行ってくるね」