「はぁ……まさかうちらを覚えてへんなんてなぁ……」

あの後また学校の部室に戻って来たけど、全員病院に行く前と同じくらい、いやそれ以上に元気が無い。

綺鳴はペしょんと机の上に上半身を預けてる。

「……」

珀成は黙り込んで落ち着いたような素振りを見せてるけど、さっきから携帯のマナーモードみたいな貧乏揺すりが止まってない。

二人共ショックなのは分かるけど、一番ダメージが大きいのは、あたしだ。

十年以上親友やってたのに、忘れられてるんだもん。

本当は泣きたいよ。

けど、泣いたところで時音の記憶が戻るわけじゃないもんね。

いつもみたいに苺味のチョコを噛んで、気持ちを落ち着かせた。

こんな時まで菓子食うのかよ、と若干呆れ気味の視線をあたしに投げてから、珀成は口を開いた。

「……でもよ、なんでいきなり倒れて一週間も寝て、起きたら記憶喪失なんだ?何かおかしくないか?」

「せやなぁ。なんやタイムちゃん中で記憶がリセットされるような事でもあったんかな……ミィちゃん、何や知ってる?持病がおしたとか……」

肩がビクッと反応して震えた。

……言った方が良いかな。

言うべきかな。