「その鞄……部長の絵がちょうど入りそうっスね」

津山先輩が持ってるのは、結構大きめのトートバッグ。

ちょうど、越水部長の絵がぴったり入りそうな大きさだ。

津山先輩は守るようにそのバッグを持ち直した。

「じゃ、あたしちゃんの絵は……」

「多分、まだその鞄に入ってますよ」

珍しく驚いた顔の部長を落ち着かせるように語る。

「えーっと……?」

まだ目が点になってる美色を馬鹿にしたように一瞥する涼村くん。

「ちょっと話を整理するか。まず、越水部長の絵にそっくりな贋作を作る。で、展覧会当日にタイミングを見計らって越水部長の絵と自分が描いた絵をこっそり取り換える。そんで皆が贋作の絵を見て部長の絵だと思い込んだ後、火をつけた」

美術部員達がざわざわし出す。

「だ、だから証拠はあんかい?!何もないのに疑うのもどうなん?!」

そう。

そこだ。

証拠が無ければ何も終わらない。

涼村くんに推理任せて大丈夫かな……

ちょっとハラハラしてきた。

「だーかーら、最初に言っただろ」

私の心配を全く気にせず、彼は楽しそうに笑い───

「鞄の中見せろ。絵だけじゃなく、火をつけたライターとかマッチとかあるだろ」