「え?!」

その声が大きくて、美術部員にも聞こえてしまった。

「え、何?谷先輩でしょ?」

「まだなんか言うの?帰りたいんだけど」

グダグダな疲れた声が聞こえてくる。

「うっせーよ!良いから黙って聞け!」

野良犬みたいに吠えて無理矢理黙らせてから、涼村くんは話し始めた。



「結論から言わせてもらう。越水部長の絵は、燃えてない」



「は?!」

今までしょんぼりしてた典美が食って掛かる。

「何言ってるのよ?!部長の絵は……あの通り燃えてるじゃない!」

「なんであの絵が部長のだって分かるんだよ?黒焦げだろ」

「え?」

もう一度全員が黒焦げの物体を見る。

確かに額縁に入ってる絵が燃えてるのは分かったけど、『これが越水 晏鶴が描いた絵である証拠は?』なんて聞かれたら、誰も答えられない。

「それに、おかしい点はまだある。この会場はぐるっと一周するような形になってる。谷先輩は他の美術部員とはぐれて、遅れて俺達と合流して歩いてたんだ。庄戸が火事を知らせに来た時は、俺達相談部+谷先輩が会場内に、美術部員達が周り終わって会場の外にいたはずだ。火をつけてたんなら、相談部か美術部員が気がついてるよ」

「あ……」