「部長の画力を恨むような人、って事は……」

皆の視線が、一人に集中する。

「ほぇ?」

視線の先にいたのは、谷先輩。

「典美、谷先輩って部長が嫌いなの?」

「う、ううん。そんな訳ないじゃない!さっきも言ったけど、本当に縁の下の力持ちで部長にも頼られてるの!」

典美がブンブンと手を横に振って否定すると、声を潜めて噂話のようにコソコソと話し出した。

「……けど谷先輩、はっきり言って絵がド下手なのよ。美術部に入ったのも、絵が上手くなりたいかららしいわ。だから他の部員からはちょっと邪魔に思われてるの」

そんな……

「ん、何か落ちてる」

涼村くんが絵(今は炭だけど)の近くで何かを拾い上げた。

火の熱で少し溶けてるけど、これは……

「金平糖やん……!」

綺鳴が口元に手を当てて驚く。

それは谷先輩がさっきくれた金平糖だった。

「え?!……あれ?!」

谷先輩が慌てて鞄を探ると、破けてほとんど中身が無くなってる金平糖の袋があった。

「数成ィ!何やっとんじゃ、おめぇ!」

「だ、だから僕じゃないって!」

津山先輩に胸ぐらを掴まれて、涙目になる谷先輩。

「うわー、先輩見苦しー……」

「最悪……」

「最低かよ……」