けど、絵は焼けちゃったし、一般のお客さんはびっくりして帰っちゃったし、証拠はあんまり無さそうだけど……

落ちてる物と言ったら、逃げる途中で落としたペンとか、紙ゴミとか、ヘアピンとか、お菓子とか、そんな感じのものばっかり。

やっぱ難しいかな……

「とりあえず、動機から考えへん?証拠が無くてもそこから推測出来はるかもしれへんよ?」

綺鳴の言い分も一理ある。

といっても、私達は美術部の事も越水部長の事も詳しく知らないから、推測のしようがない。

美色が失礼を承知で典美を呼んだ。

「ねー典美、越水部長の事嫌ったり妬んだりする人って、いたりする?」

「え、部長を?」

典美はケラケラ笑いながら、遠慮するオバサンみたいに手を振る。

「あはは、やーねぇ、いないわよそんな人!確かに言動はアレなとこあるけど、なんだかんだで人望厚いのよ?」

「本当かよ?誰からも好かれるような人間なんて、そうそういねーぞ?部長を務めるくらいの画力とセンス持ってんなら、誰かしら良く思わない奴は出るだろ」

涼村くんの問い詰めるような口調に、典美は笑顔のままタラタラと冷や汗を流し始めた。

……あ、いるのね。

私達の会話が聞こえたらしく、美術部員がざわめき始めた。