気持ちは分かる。

尊敬する先輩の絵が焼かれたのに、このまま犯人を野放しにしたくないし、かと言って部員の中から犯人探しをするのも気が引ける。

典美はそのジレンマでイラついてる。

だから、今私達が出来ることは……


「落ち着いて、大丈夫。私達で何とかするよ!」


「た、タイム、難しくない?もし美術部の中にやった人がいるなら、典美の立場がヤバいんじゃない?」

「そ、それはそうだけど……」

「いや、ここには、なんかいる」

私を庇うように一歩前に出たのは、今まで静かにしてた涼村くん。

なんかって……何?

「この中に仲間はずれっていうか……なんか違う感じの奴が。なんつーか、本能ってやつ?なんかそんな感じのなんか?で分かんのかな」

彼はキリッとしてるけど、私は肩の力が抜ける。

何それ……野良犬?野生の勘的なやつ?

セリフに『なんか』が多いせいで語彙力の無さが露呈されて、全然キメ顔に合ってない。

「まぁとりあえず、早く捜査しちゃおうよ。ちょうど近所で交通事故があって警察と消防が来るの遅れてるみたいだから、つまみ出される前にね」

スマホを見てた美色がウインクを送ってきた。

私達は現場に足を踏み入れた。