やっとスプリンクラーが動きを止めた。

稼働時間が通り雨程度だったから、他の絵は燃やされてないらしい。

起こった被害を強いて言うなら他の関係ない絵がスプリンクラーの水で濡れてしまった事と、予告状通り越水部長の絵が燃やされてしまった事だ。

相談部一行と典美と谷先輩はさっき通った道を戻り、越水部長の絵を見に行くと、もう火は弱くなり、ブスブスと燻っていた。

美術部員の皆も、哀れむような目でかつて絵だったものを見つめてる。

「ぶ、部長の絵が……」

真っ黒の炭になった上に消火器の粉とスプリンクラーの水でぐしゃぐしゃになった自分の絵を見ても、部長は平気な顔をしてた。

「別にいーっていーって。また描けば良いし~?」

やっぱり天才の考え方は違うな。

でも、せっかく賞をとった絵なのに……

「それに、脅しじゃなくてマジで絵を燃やしたって事は、あたしちゃんにそーとー恨みかなんかがあったって事でしょ?誰だか知らないけど、犯人の気が晴れたんならそれで良くなーい?」

「何言ってんですか、部長!部長はそれで良かったのかもしれませんけど、もしかしたらこの建物全体が焼ける可能性もあったかもしれないんですよ!?ただのイタズラや憂さ晴らしとは思えません!」

部長の呑気な発言に、典美がすぐさま突っかかる。

でも部長は冷ややかな目で典美を宥めた。

「じゃ、のりちゃんは犯人探しすんの?あたしちゃんは美術部の中から犯人が出てきたなんて事になったら嫌だよ?せっかく今まで仲良くしてたのにこんな事で揉めるとか、ヤダ」

グッと歯軋りする典美。

悔しい思いが握りしめた拳から伝わってくる。

「典美……」