下の紙には『玲瓏学園高等部三年、津山 陽太』と書かれてる。

そっか、この展覧会は絵画だけじゃないんだね。

「陽太くんも締切ギリギリまで頑張ってたんですよ~、僕は充分だと思うんですけど、凝り性みたいで」

へー。ちょっとキツそうだったけど、結構部活に真剣なんだ。

「ところで、谷先輩の絵はどこにあるんですか?」

「ん?僕は出してませんよ?」

「え、美術部なのに?」

谷先輩は後頭部をかきながら笑った。

「僕は美術部の皆さんみたいに絵が上手くないし……練習しても全然上達しないんです。いわゆる下手の横好きってやつですね。今回も入賞出来ませんでした」

「……」

返す言葉が見つからない。

そうなんだ……

仮に言うほど下手じゃなかったとしても、越水部長の絵と比べちゃうと低レベル扱いされちゃうか。

相談部一行は黙り込んでしまった。

先輩は悪くしてしまった場の空気を戻そうと話題を変えた。

「あ、えっと、金平糖いります?」

さっき飲食禁止の看板見えたけど……まぁいいか。

私達は可愛い袋に入った金平糖を三粒ずつ貰った。

「……あれ、先輩それ袋破れてません?鞄の中大丈夫ですか?」

「え?わ、ほんとだ!でも大丈夫です。たくさん持ってますし、皆さんの分はちゃんとありますよ!」

「いや、そういう問題じゃなく……」




と、パタパタと向こう側から典美が走ってきた。