この会場、そんなに広くないんだけど……もしかして谷先輩、方向音痴?

「一人で行くのもなんですし、一緒に回ります?後で合流すれば大丈夫ですよね?」

美色が提案した。

「え、良いんですか?ありがとうございます、助かります!」

ぱあっと先輩の顔が明るくなる。

こうして、私、美色、綺鳴、涼村くん、谷先輩の五人は作品を観て回ることになった。

「あ、これ庄戸のやつか?」

涼村くんが指さしたのは、赤毛のアンみたいな絵。

下野 芙雨(しもの ふう)ちゃんの似顔絵だ。

越水部長の絵を見た後だと少し下手に見えちゃうけど、照れ笑いのような笑顔が温かみのある作品。

そう言えば典美と芙雨ちゃんは仲良しだっけ。

モデルに選んだのは当たり前と言っても良い。

「庄戸さんは部活終わった後も家に持ち帰って描いてたんですよ。『下手に描いたら芙雨に申し訳無いわ!!』って」

眉間にしわ寄せて必死に描く典美の様子が簡単に思い浮かべられる。

きっとあの子の事だから、受験生みたいに徹夜で描いたんだろうな……

こういう硬すぎるところが逆にダメなんだよね、典美。

「あ、こっちは津山先輩のだね」

小さいテーブルに三十センチくらいの木像が置かれてる。

特撮ヒーローのフィギュアみたいだ。