「どない、落ち着いた?」

「う、うん。私とした事が、取り乱しちゃったわ」

綺鳴がいれた紅茶を啜ると、典美はだいぶ落ち着いた。

自分らしくなかった失態を誤魔化すように、黒縁眼鏡をツイとかけ直す。

「うち、理系学部で相談部の姫宮 綺鳴。とりあえず、話聞かせてくれへん?」

この二人は学部が違うから初対面のはずだけど、京都弁でのんびりはんなりと話す綺鳴の言葉は典美を上手く落ち着かせられたみたい。

典美はゆっくりと口を開いた。

「今度うちの美術部が、作品を展覧会に出展するんだけど、部室に手紙が置いてあってね……」

典美が机に置いたのは、丁寧に白い封筒に入った手紙だった。

さっき涼村くんが出した縦長の封筒とは違う、横に長いラブレターみたいなタイプ。

「なんだよ、これ?」

吹っ飛ばされた時に壁にぶつかって痛めた鼻を擦りつつ、涼村くんが中の手紙を取り出す。

……待て待て。まだアンタの入部許可してないぞ?



『明日、展覧会と言う名の低能な絵画の宴が開催される刻、越水 晏鶴(こしみず あんず)の描きし聖なる断頭台を業火に焚べに参ります』