「こんなところでサボるとは、なかなかの上級者だな」
低い声の主は、噂のあの黒いジャージの先生だった。
「1年か?見たことない顔だな。名乗れ」
「棚橋です」
正直言って、全然教師に見えない。
「棚橋、下の名前は?」
「・・・・・・」
「すまん。まずは俺から名乗る。高垣修人。3年担任の体育担当だ」
高垣修人【タカガキシュウト】
名前は知っている。
千里が、シュートシュートってうるさいから。
「棚橋、ここねです」
「ここね?かわいい名前だな!」
「似合わない名前だってよく言われます」
自虐的になったのは、いつからだろう。
言われる前に自分で言っちゃう癖がある。
「はっはは。お前、面白いな!ま、とにかくこっちに来い」
腕を掴まれて、校舎の方へと引っ張ろうとする。
「ここにいたいんです」
と腕を振り払うと、高垣先生は呆れたように笑って、私が座っていた場所に腰掛けた。

