「心って閉ざしてたら、誰も入れないんだよ。入る方も人間だからさ。傷付きたくない。閉ざされた心の中に入っていくのは勇気がいる。だから、ほんの少しでいいから開いてみろ。今みたいにさ」
腕組みをした先生は、膝の上に腕と顔を乗せ、私を見つめた。
「今みたい?」
「ああ、お前今、俺に少しだけ心開いただろ?だから、俺は少しだけ入った。笑うとかわいいんだから、自信持てよ。ちょっと心を開くだけでびっくりするくらい、世界は明るくなる。ま、俺も昔はお前みたいにガッチガチに心閉ざしてたけどね」
心に響く言葉ばかりで、どの言葉も忘れたくないと思った。
私の人生を確実に変える人だと確信してしまった。
今まで、こんな短時間で私の心を動かした人はいなかった。
心を開く、なんて考えたこともなかった。
私は、自分で、自分の世界を閉ざしていたんだ。

