黒いジャージ ~先生と私~


「俺がバイク好きって知ってんの?もしかして、俺のファン?」

「神に誓って、違います。一切、あなたに興味はありません」


冷めた生徒だと思うだろう。

この先生の周りには、キャーキャー寄ってくる女子ばかりだから。


「いいねぇ、そのドSな感じ。お前の芯の強さに俺はかけてみたい。棚橋、今心を入れ替えれば、お前は絶対に変われる!」

熱血教師面して、って思うけど、瞳の奥の優しさに思わず引き込まれそうになる。

断じて、男としてではなく。

ひとりの教師として、心を奪われそうになる。


「別に変わりたいとは思わない。でも、幸せにはなりたい」

初めて話す人にこんな想いを吐き出してしまうなんて。

私としたことが・・・・・・


「幸せになりたいって願った人だけが幸せになれるんだよ。きっと、明日になれば今日より幸せになる」

根拠も何もない意味不明なことを言われた。


「信じられないですけど」

「まぁ、とりあえず、2限目だけ、出ろ」

「え~」

「出ろ。絶対に出ろ。出ないと、校舎ぶっ飛ばすぞ」


低い声をもっと低くして、怖い顔してさ。


「はい」

必死だから、言うこと聞いてあげる。

まだ若いだろうし、教師に命かけてるのかもしれないし。

今日だけ言うこと聞いてあげる。