「私だったら、好きでもない人にあんなことしない。絶対に裏切ることなんてしない。

付き合ってる人いるくせに……最低だよ」







……付き合ってる人……?


その言葉に引っかかる。




もしかして、あんず先輩────?


あの人か…………


でもあの人は────。



そこで考えるのを終了させた。






「好きな人ね、すごくかっこいいんだ……。みんなにモテモテで、クラスの中心にいるような人で」



目の中を優しく鈴のように揺らす。



「大人っぽくて、優しくて……。けど、笑った顔があどけなくて可愛いくて……まるで子供みたいなの」



ふふっと柔らかく頬をピンクに染める。


これ以上ないくらい嬉しそうで、幸せそうで。





月乃は相手をすごく大切に想っているんだなぁと思う。


……そして、これがコイツの、本当に恋をしている姿なのだと、強制的に気付かされた。



「……そっか」



「あと、最近ちょっとSっ気あるんだって気づいたの。意地悪されたことがあって……。

でも、そんなとこも可愛いなぁとかおもったりして……」



顔をほころばせ、へへっと笑う。



「……へぇ……」



月乃が恋をすると、こんな表情するんだ。


相手はこんなにも思われてるんだ。


……そう思うと、キリリと胸が痛む。