────今まで、こんな辛いことがあっただろうか。





「あーっと……この背中のをしめればいいわけ?」


「うん!そーそー。お願いしますっ」



戸惑う俺に、とびきりの笑顔で答える。


放課後の教室で、頼まれたことをこなしながら、月乃のへんな成長を感じていた。



……月乃の意地悪な部分が出てきたか?


椅子に座って女の子の背中のチャックしめるとか……拷問?


肌はおろか、下着まで見えてるし。気づいてんのかな?




あーもー。見てらんない。

無防備すぎる。



「んっ……」



心臓がはねた。


突然色っぽい声を出したと思ったら、俺の指が月乃の背中に触れていて。



「わ、悪ィ」


とっさに謝る。



「ううん、ごめん、大丈夫。くすぐったくて。……へへ」


「そ、そか、気をつける」



それにしても、少し触れただけであんな色っぽい声が出るものなのか?


慎重になりすぎて、心臓がバクバクして、おかしくなりそう。



「……うん、ありが……ひゃあっ!」

「ごごごめんっ!」



うあ、噛んだ……。



でもそんなこんなでやっとチャックがしまり、一安心。


よかったぁ……。