《蛍人side》







────たん、たん、たん。





ためらうような足音が、屋上階段に響き渡る。



そして、とうとう俺の真ん前に来た。





遠慮がちに下から覗くように見つめてくる。




これが世間でいう上目遣い?




……やば。





「あの……」


「ねぇ、それ……わざと?」




月乃の言葉を遮るように淡々とした口調で言う。





────俺、余裕ないんだよ。






月乃がそーゆー顔するから。



俺の言葉一つでいろんな表情見せたりするから。



……なのに、悩ましいほどの可愛い仕草や行動で、俺を惹き付けて離さないから。



そして、それに気づいてないから。









────好きなんだよ、すごく。




知りたいし、見たい。月乃の全部。

誰にも知って欲しくないし、見て欲しくない。




なのに、俺の自慢だからみんなに見て欲しかったりする。


ちょっと矛盾してるんだ。




とか言ってもやっぱ誰にも渡したくない。




だから心が狭くなる。




意地悪もしたくなる。




ちょっとのことで妬いたりする。







嫌われたらやだからって我慢してたけど、やっぱ無理。