【蛍人side】













────あのね、あんず先輩に伝言頼まれて!────









君から出たのは、そんな言葉だった。



なんか、軽くショック。



俺に用事があるって……何か知らないけどちょっと嬉しかった。


だから少し期待したのに。



……あんず先輩……かぁ。



それに、伝言って……。


それはホントだとしても、逃げられたのはフツーに辛い。



だって、明らかに俺見た瞬間逃げたもん。





────月乃 詩星。




キレイな名前。







暗い夜空に浮かぶ月を、ぼぅっとひとりで眺める。





あの子、嫌いじゃない。


フツーに面白いし、一緒にいて楽しい。


不思議ちゃんで、行動が変な女友達。



俺はそー思ってるんだけど……あっちは違うのかな。




目線そらされるし、逃げられるし……。


俺、やっぱ嫌われてんじゃね?







……てか、何考えてんだろ。



最近、気づくとあの子のことばっかだ。




……明日のこと考えよ。




あんず先輩との〝約束〟に思考を移す。



〝約束〟……。




窓の外を見つめ、全てのことがうまくいかないんじゃないか、なんてことを考える。



とりあえず、流れに身を任せよう。



そう心に決めた。