遥か~新選組桜華伝~



掠れた声で言って、扉の方へ歩いていく。


その足取りはふらついていて

腕から落ちた血が、畳にいくつも跡を残している。


そんな怪我で動いたら…!


「だ、ダメっ!!」


気づけば、私は襖の前に立ちふさがっていた。


「おまえ…何を…!」


土方歳三が苛立たしげに聞いてくる。


「何をじゃないです!」


私も負けじと言い返す。


「沖田さんの言うとおり、先に手当てしなきゃダメです!」


自分でもびっくりするくらいの大声で言って、無理やり土方歳三を座らせた。


「お、おい…っ」


土方歳三は一瞬驚いた顔になる。


けれど


「…離せっ」


すぐに私の手を払いのけた。


「かすり傷だって言ってんだろ」


「でも…っ!
このまま放っておいたら、悪化してしまいますよ!」


説得しようとまっすぐ目を見つめる。


でも、苛立ったように顔を逸らされてしまった。