遥か~新選組桜華伝~



「ケホッ…ゲホッ……」


ふいに沖田さんが咳込み、口を押さえる。


「沖田さん……っ!」


「……大丈夫…ケホッ…ですから……」


顔を上げて、青ざめたまま笑って見せる。


うそだよ。


全然大丈夫そうになんて見えない。


だって沖田さん……。


あなたは……。


未来を考えたら、また涙が溢れてきて、私は首を横に振った。


今、私がするべきことは泣くことじゃない。


世界で一番愛しい人が、私を好きでいてくれている。


必ず守り抜くと


命をかけて愛すると


そう、誓ってくれたから。


「沖田さん……」


握りしめていた小太刀を、もう一度沖田さんの刀に合わせる。


キンー…


小さな音を立てて交わる十字に、涙がポタリと落ちた。