遥か~新選組桜華伝~



「その人に…手を出すな……!」


腕を前に出したまま、もう片方の手を壁について、体を支える沖田さんの姿があった。


沖田さんが刀を投げたんだ……。


「はぁ…はぁっ…」


息を荒ませながら、恐ろしい目で男を睨んでいる。


「やってくれるじゃねえか……」


男は畳に落ちている沖田さんの刀を拾い、ビュッと空気を斬った。


「そんなに早く死にてえか?」


刀から飛び散った血を見つめ、笑みを浮かべる。


「くっ…」


沖田さんは苦しそうな表情で、刀を見つめるも、それは男の手の中。


今の沖田さんの状態じゃ、取り返せるはずもない。


その間にも、男は一歩、一歩と沖田さんに近づいていく。


時間がない……!


さっきは恐くて動けなかった。


そんな不甲斐ない私を、沖田さんは守ってくれた。


自分のほうが痛くて苦しい思いをしているのに……。