遥か~新選組桜華伝~



「…やめ…ろ」


沖田さんが胸を押さえたまま、男を睨んだ。


「はっ。そんな目をしたって、どうせおまえは動けない。

黙ってこの女が斬られるのを見ていろ」


男は唇を舐めると、ゆっくりと刀を近づけてくる。


恐怖心に心臓がキリキリと傷んだ。


動けない……。


せっかく、池田屋まで来たのに。


沖田さんを助けに来たのに。


どうして…動けないの!


情けなくて、ギュッと唇を噛みしめた、その刹那。


猛スピードで刀が飛んできて、ズサッと男の腕を切り裂いた。


「ぐあああああっ!」


急に男の手が離れ、私は畳に尻もちをつく。


「ぐ…ぅ…!」


男は血まみれの腕を押さえながら、よろりと振り向く。