遥か~新選組桜華伝~



「そうもいかねえんだよ。あいつにはずいぶん酷い目に遭わされたからな」


そう言って、男は刀を持つ腕を見せてくる。


その腕には刀傷があり、血で真っ赤に染まっていた。


よく見れば反対腕も、体も……3人とも傷だらけ。


多分。


血を吐くまでは、沖田さんが優位に戦いを進めていたんだと思う。


「このまま、ただあいつを殺しても、面白くねえ」


顎をグッと掴まれて、無理やり沖田さんのほうを向かされる。


虚ろな目で、ぐったりと壁にもたれているのが見えた。


「だから、今からてめぇの女を目の前で殺してやる!」


次の瞬間には、首に刃が当てられていた。


「なっ…!」


うそ……!


体がガタガタと震えて、指一本動かせない。