遥か~新選組桜華伝~


───・・・


池田屋に一歩踏み入れると、強い血の匂いがした。


薄暗い中、聞こえてくるのは刀の音と叫び声。


「うわああっ!」


足元に人が倒れ、返り血が腕に飛んでくる。


私の横を駆け抜け、すぐ次の敵を斬りにいくのは…永倉さん。


奥では近藤さんや平助くんも戦っている。


けれど、沖田さんの姿はない。


1階にいないということは2階だ……!


傍にあった階段を駆け上がり、そのまま奥の部屋に飛び込んだ。


月明かりが部屋の角を青く照らしている。


そこに……沖田さんはいた。


おそらく長州藩士であろう男3人に囲まれ……


「はぁ…っはぁ……」


壁に寄りかかり、防御するように横に刀を構えている。