*
*
*
*
*
池田屋の前まで来ると、建物は浅葱色の羽織を着た隊士で囲まれていた。
その前で、偉そうな侍さん達が何か交渉しているよう。
「いくら会津公の頼みでも、中へ通すわけにはいかない」
彼らの前に仁王立ちしている男の人。
決して首を縦に振ろうとしないのはー…
土方さん……!
「中で戦ってる奴らは、羽織を着てないものは、全員敵とみなして斬るだろう。
無用な犠牲を避けるためにも、ここは引き下がってくれ」
中から聞こえてくる悲鳴にも、動じることなく、冷静な口調で侍さん達を制している。
私が池田屋に入りたいと頼んでも、絶対うんとは言わない。
こうなったら、一気に行くしかない!
ダッ
隊士の間を抜けて、全力疾走で池田屋に駆け込む。
「そこの娘!待て!」
背中に聞こえた隊士の叫び声も無視してー…。

