遥か~新選組桜華伝~










池田屋の前まで来ると、建物は浅葱色の羽織を着た隊士で囲まれていた。


その前で、偉そうな侍さん達が何か交渉しているよう。


「いくら会津公の頼みでも、中へ通すわけにはいかない」


彼らの前に仁王立ちしている男の人。


決して首を縦に振ろうとしないのはー…


土方さん……!


「中で戦ってる奴らは、羽織を着てないものは、全員敵とみなして斬るだろう。

無用な犠牲を避けるためにも、ここは引き下がってくれ」


中から聞こえてくる悲鳴にも、動じることなく、冷静な口調で侍さん達を制している。


私が池田屋に入りたいと頼んでも、絶対うんとは言わない。


こうなったら、一気に行くしかない!


ダッ


隊士の間を抜けて、全力疾走で池田屋に駆け込む。


「そこの娘!待て!」


背中に聞こえた隊士の叫び声も無視してー…。