遥か~新選組桜華伝~



話しているうちに、向こうに川が見えてくる。


岸を渡った向こうは、人が集まっていて、なにやら騒がしい様子だ。


けれども、春風さんはそこまで行かず、手前の橋の近くで足を止めた。


「あれが池田屋だ」


春風さんが川の向こうをまっすぐ指さす。


建物の前に集まる人達の、浅葱色の羽織が目につく……


「みんな……」


今頃あの中で、激しい戦いが続いている。


早く…沖田さんを助けにいかなきゃ!


「春風さん!
ここまで送ってくれて…って」


あれ……?


顔を上げると、隣にいたはずの春風さんの姿がない。


もう、行っちゃったのかな?


長州藩の侍が、池田屋に近づけないのはわかるけど


「お礼くらい言いたかったな」


春風さん。


強引で、謎が多い人だったけど。


いつかまた…どこかで会えたら、ありがとうって伝えたい。


でも、とにかく今は……


「沖田さん……!」


ダッ


私は、池田屋に向かって走り出した。