「…おはようごさいます、黒川部長。これからよろしくお願いします」

そう言って頭を下げた朱莉。

…それに頷いた黒川は、朱莉から俺の方に視線を向けて笑みを浮かべた。…勝ち誇ったような笑みに、眉をひそめた。

「…朱莉、荷物ここに置いとくな」
「…うん、ありがとう」

「…黒川部長」
「…なんですか?」

「くれぐれも『俺の』朱莉を、よろしくお願いします」

「…」

「…何かあった時は、俺が黙っちゃいないんで」

「…肝に銘じておきますよ」

…一触即発の雰囲気に、朱莉は俺と黒川を交互に見比べている。

それを聞き、俺は今度は朱莉の方を見た。朱莉は何を言うでもなく、少し不安そうな顔で俺を見上げる。

「…頑張れよ」
「…うん」

軽く会釈し、人事部から出ると、黒川に止められた。