「・・・あの~、久美?」

そう言いながら、久美の目の前で、手を数回振ってみた。

「・・・きゃ~!」
「?!!」

店内に響き渡る久美の声。驚きと恥ずかしさで、真っ赤な顔になり、辺りをキョロキョロ。

そんな私の所に近づいた久美は、私をギュッと抱きしめた。

「ちょ、ちょっと!煩いし!恥ずかしい!」
「いいじゃん、いいじゃん!お姉さん嬉しいよ!やっと、男女の仲になったんだね」

「…男女の仲なんて、生々しいから止めてよ」

そう言って俯く私の頭を、久美は何度となくナデナデシテいる。

「ずっと、ずっとヤキモキしてたんだから」
「・・・ずっと、ずっと?」

「・・・え?」
「久美さ、なんか知ってるの?やたらと、司とくっつけたがってたし・・・」

…形勢逆転。とは、まさしくこの事かもしれない。

私は疑いの目で、久美を見つめる。

・・・だが、久美の表情は、さっきと変わらない。

「…なんの事?私は何も知らないわよ。ただ、お似合いだと思ってたから、そうなればいいなあって思ってただけだよ?司は私らの同期だし、みんなで仲良くなれたら、いいなと、思ったくらい」


「・・・ホント?」
「うん、本当。ほらほら、それじゃあもう一回乾杯。司と朱莉が恋人になった祝杯」
「・・・おおげさ」

…疑う事を止めた私は、久美とまた、楽しくお酒を飲んだ。

・・・ちょっと浮かれて飲み過ぎた、かな。