「離して」
「離さない。このまま帰るよ」
「ちょっと!」

赤い顔のまま焦る朱莉が可愛いと思いながら、その手は自然と恋人つなぎに変わっていく。

朱莉は、もう観念したのか、その赤い顔を隠すように、俯いたまま俺の半歩後ろをついてくる。

…でも、俺を握る手をギュッと掴んで。

…あ~、なんでお前はこんなに俺を熱くさせるんだろう。

今にも理性は飛んでしまいそうになる。それでも、俺は理性を飛ばさないように必死に堪えている。


「…今夜は何を食べる?」
「…司が作ってくれたものなら何でも」

その言葉に驚き、足を止めると朱莉を見下ろす。すると、朱莉は可愛らしい笑顔でこう言った。

「だって、前に作ってくれた、司の料理がスッゴク美味しかったから」
「・・・・」

「…ダメ?」

…上目遣いに、そんな事を言われてしまうと。

「・・・しょうがねぇな。冷蔵庫に何が入ってたっけ?」

なんて、つい、のせられてしまう。

「…司、大好き」

…この小悪魔め。

と思ったけど、そんな朱莉を好きになってしまったオレが完敗なのは、あえて口にはしなかった。