向こうから走ってくる裕美

「走るな、転ぶぞ」
「ほら、見てみて。おじさんがオマケしてくれた」
「話聞いてんのかよ」

裕美はそれどころではなさそうな顔で
わたあめを一つ俺にくれた。

「お前は...」
「ん?」
「好きな人とか..いるの」

彼女は驚いた。
正直、俺自身も驚いた。
こんな事言うつもりじゃなかったのに。

「...いる、よ」
「ふぅん」
「悠ちゃんは?」
「俺もいる」
「へぇ...」

彼女が少しさびしそうな顔をしたように見えたのは、
俺の自意識なのだろうか。

「悠ちゃんの好きな人ってどんな人」
「俺の好きな人?そうだなぁ」

裕美...なんて言ったら驚くんだろうな