「...やっぱり、もう夏なんだな」

時がたつのは早くて。

「まだあの時の事気にしてるの?」
「気にしてるっつーか...」

俺は昔、親から育児放棄をされていた。
この日ぐらいの猛暑日に部屋に閉じ込められたことだってある。

それでも親は平然としていて...憎かった。
虐待もよくある事。

「...っ!お母さん、痛いよ」

そんな声が届くはずもなく、未熟だった俺は
やめての一言も言えなかった。

でもある日、施設に入れられた。

「もう、お前なんかいらない」

それが最後に聞いた親の声。
最低だった。
でも、やっと解放された、その気持ちでいっぱいだった。

そのときに出会ったのが







―――裕美だった。

「もう...気にしてねーよ」
「そう、ならいいんだけどね」

俺の手をひっぱりながら彼女は笑った。
懐かしい、手の温度。