一め惚れ

けれどそれが事実だと裏付けするように、拒絶された女性は怒ったようにその場を離れた。


まあ、あれだけ自信満々で言っておいてあんなこと言われたら怒って当然だけれど。


あんなこと…か。

それがまさか、この人の口から出た言葉なんて。


未だ方針状態のあたしに、先輩が声をかけた。


「ひいた、よな」

上を向くと、先輩と目があった。

「本当の俺はこういう奴だよ」

にこやかに、だけど諦めたようにそう言う先輩。

だけどあたしには、それが信じられなかった。
先輩と一緒にいて少ししか経ってないけれど、最初に見たあの笑顔は作り物なんかじゃないって思うから。

あたしは我に返って、反論しようと口を開く。


「そんなこと…っ」

けれど、言い終わらないうちに先輩が続けた。


「いいよ、嘘はつかなくて。嫌いなものには心を隠せない」


そんなことを弱々しく言う先輩の手を、強く握った。

「そんなこと、ないです。誰だって、苦手なものはありますよ。ほら、あたしだって寝てるのを起こされたら起源悪くなるし」


精一杯伝わるように考えたつもりだけど、自分の説明力のなさに絶望する。


「あはは。それはなんか違う気がするけど…ありがとう」


そう言って、あたしが握った手を強く握り返してくれた。



握った手…

「はっ」


あたしは、きつく握りしめていた手を離した。


は、恥ずかしい…あたしはなんてことを。

ど、どさくさに紛れてボディタッチだなんて。



「…ふふっ、君は…面白い子だね」


さっきの、皮肉な笑顔ではない、満面の笑みでそう言われるとなんだかドキドキしてくる。

「さすが、どこでも寝られるだけある」


「…」


こんなこと言われてるのに、嬉しいだなんて思ってしまう。

今、この瞬間一緒にいられて

少しでもあたしのことを考えてくれていることが、どうしようもなく嬉しいだなんて。


あぁ、あたし…

この人が、好きになったみたい。