「信じられねぇよ」 「……信じたく、ねぇよな」 だって、こんなの、嫌に決まってる。 好きな人が、自分以外の男と両思いだなんて。 ――タチの悪い、悪夢だ。 「あーっ!」 決して大きくはない、かすれた叫びが床にぶちまけられた。 ずっと沈んでいた顔が、上がった。 さらり、と黒い前髪を撫でる。 晴れやかにはほど遠く、雨模様にはそぐわない表情が、あらわになった。 「ほんと、むずいな」 「……だな」 ボロボロの作り笑顔だったが、指摘はしない。 代わりに、眉を八の字にして、笑い返した。