まるで、熟した林檎のような恋でした。





ホウキを片付け、小佐田が用具室を出る。


俺も続こうとして、ピタリ、扉の前で止まった。



俺ときみとじゃ、気持ちが違う。


きみは、俺にどんな印象を持っているんだろう。


ここを離れれば、掃除だけでなく全て終わってしまったら。そもそも、こんな大したことのない時間では、きみの中では何も始まらないかもしれない。


ネガティブな思考が、終わりを迎えることを躊躇していた。




「更科先輩?」



いつの間にか俯いていた俺の顔を覗き込みながら、小佐田が恐る恐る声をかけた。



「どうしました?」


「あ、いや……なんでもない」



適当にごまかす。

タン、と軽く見せかけた足取りで、用具室を出た。




「今日はありがとうございました」



ペコリとお辞儀をされ、つられて小さく頭を下げた。


なぜだかひどく虚しい。

どこか他人行儀な遠い距離感に、心が軋む。