今まで、予兆はいくつもあった。
更科先輩にだけ感じる鼓動、熱、想い。
この甘い香りだって、そう。
こんなに意識してしまうのは、告白されたからだとばかり思っていた。いや、思い込みたかっただけだ。
だって、私が好きなのは、世くんで。
他の人に簡単に揺らぎはしない。
……はず、だった。
更科先輩の昔話を聞いて、語る姿を見て。
明白に、感じてしまった。
もしかしたら、初恋の男の子は更科先輩かもしれない。
ううん。世くんの時のような「かもしれない」という曖昧な表現なんか、要らない。
あぁ、この人だ、って。
鮮明に想ったんだ。
茜色の差す、ゴンドラの中。
決して窮屈ではない沈黙に、支配される。
もう夕方。
晴れ渡った青空は、とうにオレンジに魅せられていた。
1秒1秒がもう少し遅ければいいのに。
そう考えてる自分に、戸惑った。



