綺麗なお花畑も、美味しく食べてくれたランチも、当たり障りないお喋りも、昼食後にやったバトミントンも、奢ってくれたワゴンのアイスも。


2人だけの空間にいる今だって。

どれもこれも、大切な思い出。


退屈な時間など、どこにもなかった。




「……なら、よかった」


返ってきた呟きには、まだ、憂いが忍んでいた。




ただ、昼食後からよく上の空になっていたのも、本当だ。



どうしても考えてしまうんだ。

初恋の男の子の正体を。



ずっと、初恋の男の子は、世くんだと思ってた。


はっきり確かめたわけではないけれど、そうだって信じたかった。


それをきっかけに、恋をした。




『その女の子が、あの絵本を持ってて、誰か来るまで一緒に読んでた』




もし、もしも。

正体も、恋も、間違いだったら?


大きな勘違いで、真実が目の前に在るとしたら?




初恋の男の子が、更科先輩だったら?