まるで、熟した林檎のような恋でした。





だんだんと表情筋を引きつらせ、目を瞠らせていくりんごちゃんに気づかずに、瞼を優しく伏せた。



「その女の子が、あの絵本を持ってて、誰か来るまで一緒に読んでた。……懐かしいな」



あの日のことは、今でも憶えてる。


どうしてか、忘れられなかった。



ただ好きな絵本を読んでただけの時間だったのに、ボール遊びをする時間よりずっときらめいていたんだ。




「……え?」



数秒の沈黙の後。


りんごちゃんは、驚愕と困惑が入れ混じった呟きを落とす。



「嘘、でしょ……?」



ゆらり、ゆらり、と。

どの色の花も、風にそよがれ、揺れていた。





「もしかして――」




けれど、伏せられた視界じゃ、好きな子も情景もまともに窺えなかった。