礼なんか、言われる資格ない。
俺は何もしてない。できなかったんだ。
りんごちゃんの素直な気持ちが、歯がゆい。
「熱、か……。昨日、髪を乾かさず、夜風に当たっていたせいかもしれません……」
朦朧【モウロウ】とした意識の中。
静かに閉じた目の代わりに、唇が薄く開く。
「いっぱい、いっぱい、考えてたんです。昔のこと、世くんのこと。でも、一番考えてたのは、更科先輩のことで」
「え……?」
「眠りにつくまで、ずっと、考えてました」
それは、単なるうわ言だった。
ポツリ、ポツリ。
窓の外の大雨と、混ざっていく。
「更科先輩のことを考えていたら、眠れなくなって、なおさら考えちゃうんです」
……やめろ。
「自分がこんなに更科先輩のことを意識していたことに、びっくりしました」
やめてくれ。



