そっと視線を背けた碧に、部長はやるせなく苦笑する。
「今日の練習試合、絶対勝とうな」
俺と碧の肩に、一瞬、部長の手が満足そうに置かれた。
ググッ、とまた背中を押す力が強まる。痛い痛い!やめろ、碧!
大きく抵抗すれば、珍しくやすやすとやめてくれた。
みぃちゃんに呼ばれて、部長は去っていく。
背中を眺めながら、舌打ちした。したのは言わずもがな、碧だ。
「碧はなんで、部長をそこまで煙たがるんだ?」
ずっと気になっていた。
誰に対しても人懐っこく接する、あの碧が、なぜ部長にだけ嫌悪感をむき出しにするのか。
そんな碧を咎めもせず、親睦を強要しようともせず、ましてや苦手意識の原因を知っていた、部長との関係も。
「……怖ぇんだよ、あの人」
「まあ、確かに、怒ると怖いけどさ。普通にいい人だと思うけどな、俺は」
「そういう怖さじゃなくて」
じゃあ、どういう怖さ?