涼しかったはずの風が、急に冷たく感じた。
肌が冷える。
涙が流れそうになり、慌てて目をこする。
『好きだ』
なんで、今。
更科先輩の顔が、浮かんだんだろう。
胸の奥の奥が、痺れたみたいに苦しい。
返事はいらないと言われたけど、本当にこのままでいいのかな。
宙ぶらりんに揺れている、今の状態はひどく危うい。
いつか、そっち側に落っこちちゃいそうなのが、嫌で。そう不安がる自分も、嫌で。
結局は、早く楽になりたいから悩んでる。
バカげた結論とは裏腹に、もうひとつ。
返事をして、更科先輩と話せなくなるのが、何より嫌だ。
なんてことを本気で思ってしまった私は、きっとどうかしているに違いない。
「……くしゅんっ」
あぁ、ほら。
案の定、くしゃみが出た。
どうにかなってる証だ。
寝よう。寝てしまえば、全て忘れられる。