「私に何か言いたいことがあったんじゃないの?」
だから呼び留めたんでしょ?
そう聞けば、「あ、そうだった」と緩く笑った。
「幸から聞いたぞ。明日の練習試合、応援しに来てくれるんだってな」
「う、うん」
「嬉しいよ。ありがとな」
ポン、と濡れた頭に軽く触れた手が、大きくて、温かくて。
想いがはち切れそうになる。
あぁ、やっぱり、私は――。
「世くん、頑張ってね」
「ああ、精一杯頑張るよ」
こんなありきたりなエールしか、送れない。
それでも、世くんは、そんなこと気にせずに喜んでくれる。
骨ばった手が、離れていく。
恋しくて、寂しくて、辛い。
言いたいわがままを、ぐっとこらえた。



